「平成24年度 公募助成(活動・研究)」審査総評

「平成24年度公募助成(活動・研究)」の審査結果について

公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長  白取 健治

平成24年度公募助成に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。

1 応募状況

今年度の公募助成では、募集テーマを「事故、災害が起こった際の備えやその後のケアに関する活動や研究」とし、昨年度までの募集内容を踏まえつつ、助成の趣旨が伝わりやすいように工夫を行ったうえで募集を実施しました。
活動助成においては、東日本大震災や和歌山県・奈良県を中心に甚大な被害を与えた平成23年9月の台風12号による水害などにおいて見受けられたように、事故・災害においては人々が支え助け合うことが不可欠であり、その拠り所としての地域コミュニティの重要性が再認識されたことに注目しました。そこで、近畿2府4県における地域での新たな仕組みづくりやネットワーク構築など『地域との連携やつながり』を重視する活動を今年度の重点対象としました。
平成23年10月17日から11月30日までの募集期間中には、助成に関する個別相談会を開催したほか、中間支援団体が主催する助成金相談会等に財団職員が参加するなど、募集テーマの浸透に向けて積極的な広報活動を展開しました。
その結果、応募総数は活動助成への応募が40件(うち、継続申請11件)、研究助成への応募が36件、計76件となり、昨年度との比較では減少となりましたが、広く近畿2府4県から応募をいただくとともに、後ほど述べますが本公募助成の趣旨に合致した大変質の高い応募が多数寄せられました。

2 審査プロセス

審査は、これまでと同様、まず事業審査評価委員会を開催し、委員全員で審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
6名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、全委員出席のもと、最終審議の場として改めて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、助成対象を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、本公募助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準としながら、「社会的な必要性」、「独創性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域の連携やつながり」に加えて、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等を総合的に勘案し、助成対象を決定しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、新規案件とのバランスを考慮しながら、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力を十分に吟味したうえで、助成対象を決定しました。

3 審査結果

今回の募集では、質の高い応募が多数寄せられ、これまで見受けられた「子どもの福祉・青少年の育成」「高齢者福祉」「防犯」「まちおこし」に関わる内容のみを目的とした、本公募助成の趣旨との関連性が薄い応募が大幅に減少していました。これは、募集テーマの改善と募集テーマの浸透に向けた積極的な広報活動が実を結んだ結果だと考えています。さらには、東日本大震災や平成23年台風12号水害に関係する活動など、従来から大規模な事故や災害等に対する支援に積極的に取り組んできた当財団として助成を行うべき内容の応募も多く見受けられました。
最終的には、当初予定していた助成総額を大幅に超えて支出できる範囲内でできうる限りの助成を行うこととし、活動助成では19件、1,581万円(昨年度20件、1,606万円)、研究助成では7件、1,298万円(昨年度10件、1,369万円)、合計26件、2,879万円を助成対象案件として採択しました。結果、採択率は、活動助成で48%(昨年度30%)、研究助成で19%(昨年度26%)となりました。

  • (1) 活動助成
    全体的には、東日本大震災や平成23年台風12号水害を契機とした防災・減災意識の高まりを受け、防災・減災に関する応募が多く、採択案件も多数にのぼりました。東日本大震災に関する活動の応募もあり、「第2回東日本大震災に関する活動助成」に応募された案件に勝るとも劣らない、被災者にとって必要な活動であり、長期的、継続的な被災地・被災者支援が不可欠と考え、可能な限り助成総額を拡大し採択いたしました。
    また、JR福知山線列車事故の経験を通して命の尊さや人と人とのつながりの大切さを語り伝える活動、大規模事故の被害者に対するサポートのあり方や事故の風化防止を考え、訴える活動等の応募もあり、財団の設立趣旨に合致する活動として今年も採択いたしました。
  • (2) 研究助成
    活動助成と同様に、防災・減災に関する応募が多数寄せられました。限られた助成金の中で研究分野のバランス等も重視し、心身のケアや防災・減災、救急救命、交通など幅広い分野から本公募助成の趣旨に合致し、社会的必要性が高く独創的、先駆的な案件を採択しましたが、グリーフケア、スピリチュアルケア等の心のケアに関する研究やリハビリテーション等の身体的な機能回復に関する研究が、応募、採択ともに少なかったことが残念でありました。

4 総評

今回も質の高い、熱意あふれる応募を多数いただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変うれしく思います。
今回の募集では、助成総額を大幅に拡大し、支出できる最大の範囲内で多くの質の高い案件を採択しました。一方で、事故、災害が起こった際の備えやその後のケアにおいて重要な役割を果たす、心のケアや身体の機能回復に関する案件が応募、採択ともに少なかったこと、また活動助成においては採択案件に占める継続助成の割合が大きくなったことなどの課題が残されています。
来年度以降は募集要項や申請書の見直しなど、より一層申請者が応募しやすい環境を整え、心のケアや身体の機能回復に取り組む活動や研究といった案件の応募が多く寄せられるような工夫が必要であると考えています。
「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。「安全で安心できる社会」の実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、そして新しく取り組みを開始される皆様からの応募を心よりお待ちしています。

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「安全で安心できる社会づくり」の一端を担いたいとの思いから、事故や災害に遭われた方々などへの心身のケアに関わる活動や、
地域社会における安全構築に関わる活動に対する支援及び安全に関する啓発活動等を行っています。

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