「2018 公募助成(活動・研究)」審査総評
「2018公募助成(活動及び研究)」の審査結果について
公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治
「平成30年度(2018年度)公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。
1 応募状況
「平成30年度(2018年度)公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケアに関する活動や研究」として募集いたしました。
活動助成及び「活動助成(特別枠)」においては、東日本大震災や平成26年広島市土砂災害を受け、事故・災害時における地域の人々の拠り所としての地域コミュニティの重要性が再認識されていることに注目し、地域での新たな仕組みづくりやネットワーク構築など『地域との連携やつながり』を重視する活動を前年度に引き続き重点対象としました。また、広島県に拠点がある団体についても前年同様に募集をいたしました。
募集開始前より、近畿2府4県の社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関等をはじめ、広島県内のボランティア情報センター等を対象にしたチラシ郵送や訪問での広報活動を行い、募集期間中には、電車内の中吊り広告や駅でのポスター掲示を行ったほか、助成に関する個別相談会を大阪や広島で開催するなど、公募助成の内容をより多くの方々に知っていただけるよう積極的な広報活動を展開しました。加えて、大学等研究機関の研究者にもより広く知っていただくため、一部大学への訪問広報活動にも取り組みました。
しかし、東日本大震災や広島市土砂災害といった災害支援については、一定の年月が経過したことで応募が減少傾向であること、新たな団体からの応募が減ったことなどの要因により、結果的には前年より減少となる応募数となりました。
活動助成は18件減少した50件、活動助成(特別枠)が8件減少の18件となり、研究助成が前年を1件上回る59件となりました。合計では、前年より25件少ない127件(前年152件)の応募をいただきました。
2 審査プロセス
審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある本公募助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準としながら、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点で厳正に審査を行いました。また、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等を総合的に勘案して、採択案を決定しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力を十分に吟味したうえで、採択案を決定しました。
3 審査結果
今回の募集でも、質の高い応募が多数寄せられました。これは、本公募助成が回を重ねながら、地域の関係機関や大学等研究機関への訪問広報活動をはじめ、個別の相談会の開催などの広報活動が実を結び、募集テーマが浸透した表れだと考えています。
最終的には、当初予定していた助成総額5,000万円を上回る、活動助成27件、1,661万円(前年32件、1,854万円)、活動助成(特別枠)9件、629万円(前年13件、887万円)、研究助成19 件、3,003万円(前年14件、2,371万円)、合計55件、5,293万円(前年59件、5,112万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。採択率は、活動助成が54%(前年47%)、活動助成(特別枠)が50%(前年50%)、研究助成が32%(前年24%)となり、全体では43%(前年39%)となりました。
-
(1)活動助成
昨今の災害報道や異常気象等による防災・減災意識の高まりを受け、防災・減災に関する応募が多く、採択案件も多数にのぼりました。このほか、心のケアに関する案件も多くの応募をいただき、防災・減災関連に次いで採択いたしました。 -
(2)活動助成(特別枠)
東日本大震災等の被災地・被災者支援に関する活動については、発災からの時間の経過に応じ、今の段階で被災者が求める活動として、心のケアや復興に関する案件を中心に採択いたしました。
また、今回引き続き募集を行った広島県に拠点がある団体については、土砂災害を契機に避難防災訓練を実施している案件を採択いたしました。 -
(3)研究助成
活動助成と同様に、防災・減災に関する応募が多数寄せられ、当該分野の採択数が多くなりました。また、心身のケア等に関する研究も防災に次いで採択いたしました。その他、限られた助成金の中で研究分野のバランス等も重視した結果、救命、安全など幅広い分野から本公募助成の趣旨に合致し、社会的必要性が高く、独創的、先駆的な案件を採択いたしました。
4 総評
今回も質の高い、熱意あふれる応募を多数いただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
昨年と比較すれば、活動助成や活動助成(特別枠)で応募の減少がみられましたが、研究助成は引き続き多くの応募をいただき、前年を上回る結果(1件増加)となりました。これは、これまでの広報活動に加え、医療系の大学等も加えた一部大学等の研究機関を訪問したことなどにより、本公募助成の認知度が高まった結果だと思います。
来年度以降も引き続き訪問広報に積極的に取り組むとともに、募集要項や申請様式の見直しなど、申請手続に係る改善をあわせて行い、申請者がより応募しやすい環境を整え、さらに質の高い案件の応募が多く寄せられるような工夫をしていく必要があると考えています。
また、一例でありますが、「必要事項の記載漏れ」「収支の内訳や算出根拠が不明確」などといった申請上の記載不備、書類不備が理由で、内容がよくても、残念ながら不採択とせざるを得ないケースもあります。
2018年も個別相談会の開催を予定しておりますので、申請の悩みなど是非相談していただければと思います。
「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。「安全で安心できる社会」の実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、そして新しく取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。