「2019 公募助成(活動・研究)」審査総評
「2019年度公募助成(活動及び研究)」の審査結果について
公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治
「2019年度公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。
1 応募状況
「2019年度公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケアに関する活動や研究」として募集いたしました。
「活動助成(特別枠)」においては、「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」(以下()内略)による甚大な被害の発生を踏まえ、同災害に対する被災者支援活動を特別枠とし、広島県及び岡山県に活動拠点を置く団体も対象に加えることといたしました。また、引き続き長期的な支援が必要とされる東日本大震災や平成26年広島市土砂災害に対する支援についても前年同様『地域との連携やつながり』を重視する活動を重点テーマに募集いたしました。
募集開始前より、近畿2府4県、広島県及び岡山県内の社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関等への訪問やチラシ郵送による広報活動を行い、募集期間中には、駅等でのポスター掲示を行ったほか、助成に関する個別相談会を大阪及び広島に加え、初めて岡山地区でも開催するなど、公募助成の内容をより多くの方々に知っていただけるよう積極的な広報活動を展開しました。平成30年7月豪雨の被災者支援活動に対する助成支援についても、広島地区で一部マスコミにも取り上げていただいたこともあり、一定の認知を得ることが出来たと感じております。
平成30年7月豪雨のほか、昨年夏以降の自然災害の激甚化や多発化等を反映し、災害関連の応募が増えたこともあり、前年より活動助成は5件増加し55件、活動助成(特別枠)は10件増加し28件、研究助成は5件増加し64件となりました。合計では20件多い147件(前年127件)の応募をいただきました。
2 審査プロセス
審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある当財団による本助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準とし、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等も十分踏まえつつ、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点で厳正な審査を行い、採択案を決定しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力を十分に吟味したうえで、採択案を決定しました。
3 審査結果
今回の募集でも、質の高い応募が多数寄せられました。これは、本公募助成が回を重ねながら、地域の関係機関や大学等研究機関への訪問広報活動をはじめ、個別の相談会の開催などの広報活動が実を結んだほか、既助成団体の紹介等、本助成が地域社会に浸透してきたことの表れだと考えています。
最終的には、当初予定していた助成総額5,000万円を上回る、活動助成28件、1,740万円(前年27件、1,661万円)、活動助成(特別枠)14件、934万円(前年9件、629万円)、研究助成16 件、2,487万円(前年19件、3,003万円)、合計58件、5,161万円(前年55件、5,293万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。採択率は、活動助成が51%(前年54%)、活動助成(特別枠)が50%(前年50%)、研究助成が25%(前年32%)となり、全体では40%(前年43%)となりました。
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(1)活動助成
昨今の災害報道や異常気象等による防災・減災意識の高まりを受け、防災・減災に関する応募が多く、次いで、心のケア、救命に関する取り組みの応募がありました。 採択件数においても、その順序を反映する結果となりました。 -
(2)活動助成(特別枠)
平成30年7月豪雨の被災者支援活動に多くの応募があり、東日本大震災等の被災地・被災者支援に関する活動については、発災からの時間経過もあり、昨年に引き続き前年を下回る応募となりました。活動内容としては、ともに被災者の心のケアに関する応募が多く、それらを中心に採択いたしました。
なお、2府4県以外に拠点がある団体として広島県から6団体採択しました。岡山県の団体からは応募がありませんでした。 -
(3)研究助成
活動助成と同様に、防災・減災に関する応募が多数寄せられ、当該分野の採択数が多くなりました。また、心身のケア等に関する研究も防災に次いで採択いたしました。その他、限られた助成金の中で研究分野のバランス等も重視した結果、交通、救命など幅広い分野から本公募助成の趣旨に合致し、社会的必要性が高く、独創的、先駆的な案件を採択いたしました。
4 総評
今回も質の高い、熱意あふれる多くの応募をいただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
昨年と比較すれば、平成30年7月豪雨による被災者支援活動の特別枠への追加等の要因もありますが、活動助成や活動助成(特別枠)、研究助成の全分野で前年を上回ることとなりました。これは、これまでの広報活動に加え、本公募助成の認知度がより高まった結果だと思います。
質の高い応募がある一方で、採択となった案件についても、内容計画等もう少し詳しく、具体的に書いていただきたいと感じるものもありました。また、「必要事項の記載漏れ」「収支の内訳や算出根拠が不明確」などといった申請上の記載不備、書類不備があるために、内容自体はよくても、不採択とせざるを得ないケースもありました。さらに質の高い応募を多数いただけるよう、適宜申請様式の改善や書類不備等を未然に防ぐためのチェックリストの見直しを実施していく必要もあると考えています。
2019年も3地区で個別相談会の開催を予定しておりますので、申請の悩みなど是非相談していただければと思います。
「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。「安全で安心できる社会」の実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、そして新しく取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。