「2020 公募助成(活動・研究)」審査総評

「2020年度公募助成(活動及び研究)」の審査結果について

公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治

「2020年度公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。

1 応募状況

「2020年度公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを引き続き「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケアに関する活動や研究」として募集いたしました。
「活動助成(特別枠)」においては、甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」(以下( )内略)に対する被災者支援活動につき、引き続き広島県及び岡山県に活動拠点を置く団体も対象とし、特別枠として募集するとともに、東日本大震災や平成26年広島市土砂災害に対する支援活動についても同枠として募集いたしました。
募集にあたり、対象となる府県にある社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関等への訪問やチラシ郵送による広報活動、駅等でのポスター掲示を行ったほか、助成に関する個別相談会を大阪、広島及び岡山地区で開催しました。特に、前回募集において、大きな被害がありながら応募のなかった岡山県の団体に、本助成の内容を少しでも知っていただけるような広報活動を展開し、同地区の複数の新聞に採り上げていただいたことや、自治体等から地域のボランティア団体等へ積極的なお声かけをいただいたことも相俟って、同地区において想定を上回る認知を得ることが出来たと感じております。
研究助成の応募は減少したものの、平成30年7月豪雨の被災者・被災地支援活動を行う岡山県の団体の多くの応募が加わった結果、前年より3件増加し合計150件の応募をいただきました(活動助成は4件増加し59件、活動助成(特別枠)は10件増加し38件、研究助成は11件減少し53件となりました)。

2 審査プロセス

審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある当財団による本助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準とし、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等も十分踏まえつつ、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点で厳正な審査を行い、採択案を決定しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力のほか、申請時点での具体的な活動成果等を総合的に吟味したうえで、採択案を決定しました。

3 審査結果

今回の募集でも、本助成の趣旨に合致する多数の活動及び研究の応募がありました。これは、地域の関係機関等への訪問広報活動や個別の相談会の開催など、本助成の地道な広報活動が実を結んだことに加え、既助成団体により新たな団体等への紹介いただくことによる認知の広がりもあり、本助成が地域社会に年々浸透していることを実感しています。
最終的には、当初予定していた助成総額5,000万円を上回る、活動助成34件、2,104万円(前年28件、1,740万円)、活動助成(特別枠)26件、1,615万円(前年14件、934万円)、研究助成8件、1,370万円(前年16 件、2,487万円)、合計68件、5,089万円(前年58件、5,161万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。採択率は、活動助成が58%(前年51%)、活動助成(特別枠)が68%(前年50%)、研究助成が15%(前年25%)となり、全体では45%(前年40%)となりました。

  • (1)活動助成
    度重なる自然災害の発災のほか、異常気象等による防災・減災意識の高まりから、防災・減災に関する応募が多く、次いで心のケア、救命、安全に関する取り組みの応募が続くこととなりました。採択件数においても、それらを反映した結果となりました。
  • (2)活動助成(特別枠)
    平成30年7月豪雨の被災者・被災地支援活動、特に岡山県倉敷市における支援活動に多くの応募がありました。東日本大震災等の被災地・被災者支援に関する活動については、発災からの時間経過もあり、前年を上回ることはありませんでした。活動内容としては、被災者の心のケア、コミュニティの復興に関する応募が多く、それらを中心に、且つ今必要な支援という観点も考慮のうえ採択いたしました。
    なお、2府4県以外に拠点がある団体として岡山県から10団体、広島県から3団体を採択しました。
  • (3)研究助成
    活動助成と同様に、防災・減災、次いで心のケアに関する応募が多数寄せられました。採択に当たっては本公募助成の趣旨及び社会的必要性等の審査基準に該当するものとし、うち「計画の遂行能力」に関しては、得られる成果の具体性が高いかどうかも含め慎重に審査を行い、分野バランス等も考慮し、防災・減災、心のケアに加え、交通、救命分野からそれぞれ採択いたしました。

4 総評

今回も熱意あふれる多くの応募をいただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
昨年と比較すれば、研究助成で前年を下回ることとなりましたが、活動助成については、活動助成(特別枠)とともに前年を上回り、合計では2年連続前年を上回る結果となりました。これは、本公募助成の認知度が回を重ねる毎に高まっている結果だと思います。
全体を通じ、質の高い応募がある一方で、申請上の記載不備、書類不備がある等形式的要件のために、内容自体はよくても、残念ながら不採択とせざるを得ないケースも少なくありませんでした。不備事項を改善し再度の応募をしていただきやすいよう、不備に至った主な事由を特定して示せるよう不採択通知書の見直しを行いました。さらに初めての方にも多数応募いただけるよう、申請様式の簡素化等も今後検討してまいりたいと考えております。
研究助成については、採択件数は前回に比べ大幅に減少しました。最近の採択案件において、所期の研究成果に対し、十分とは言いにくいものも見受けられ、今回の審査では、質が高いのは勿論ですが、そのような観点も踏まえ、審査委員間で具体的な成果イメージが共有できるかどうかも一つのポイントとして採択案を決定しました。採択となった研究者の方は、是非、所期の研究成果が得られるよう取り組んでいただきたいと思います。

「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。その実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、新たに取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。

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「安全で安心できる社会づくり」の一端を担いたいとの思いから、事故や災害に遭われた方々などへの心身のケアに関わる活動や、
地域社会における安全構築に関わる活動に対する支援及び安全に関する啓発活動等を行っています。

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