「2021 公募助成(活動・研究)」審査総評

「2021年度公募助成(活動及び研究)」の審査結果について

公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治

「2021年度公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。

1 応募状況

「2021年度公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケア、並びに事故、災害等の風化防止に関する活動や研究」として募集いたしました。事故については、定義づけを行い、事故防止や安全構築に向けた草の根の取組みを幅広く募ることとしました。
「活動助成(特別枠)」においては、甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」(以下( )内略)に対する被災者支援活動につき、引き続き広島県及び岡山県に活動拠点を置く団体も対象とし、特別枠として募集するとともに、東日本大震災に対する支援活動についても同枠として募集いたしました。
募集にあたり、対象となる府県にある社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関等へのチラシ郵送等を行いました。今回は新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から訪問広報等を行うことができませんでしたが、各所でチラシ等の掲出や配布、ホームページ等への情報掲出に積極的にご協力をいただいた結果、例年に比べ余り遜色のない認知が得られたのではないかと感じております。助成に関する個別相談会(大阪、広島及び岡山地区で開催)にも多くの方にお越しいただきました。
一方で、コロナ禍はこれまで当たり前のように出来ていた活動や研究に大きな制約を与えることとなり、代替方法等工夫いただいている団体や研究者もありますが、応募数に少なからぬ影響があったと考えております。コロナ禍に関しては、前年度の公募助成について、それぞれの計画策定時点からは想定しえない事態になったことに鑑み、半年程度の助成期間延長の特例措置を講じており、応募数減にも作用したものと考えております。
その結果、活動助成、活動助成(特別枠)、研究助成それぞれで前年より減少し、合計123件(前年150件)の応募をいただきました。

2 審査プロセス

審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある当財団による本助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準とし、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等も十分踏まえつつ、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点に加え、新型コロナウィルスの影響を踏まえた計画の実行可能性も意識し、厳正な審査により採択案を決定しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力のほか、申請時点での具体的な活動成果等を総合的に吟味したうえで、採択案を決定しました。

3 審査結果

今回の募集でも、本助成の趣旨に合致する多数の活動及び研究の応募がありました。これは、地道な広報活動、各機関による告知協力の効果に加え、既助成団体により新たな団体等への紹介いただくことによる認知の広がりによるものも大きいと考えており、本助成の地域社会への浸透を実感しています。
最終的には、当初予定していた助成総額4,000万円を上回る、活動助成33件、1,964万円(前年34件、2,104万円)、活動助成(特別枠)17件、1,066万円(前年26件、1,615万円)、研究助成7件、1,124万円(前年 8件、1,370万円)、合計57件、4,154万円(前年68件、5,089万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。採択率は、活動助成が67%(前年58%)、活動助成(特別枠)が52%(前年68%)、研究助成が17%(前年15%)となり、全体では46%(前年45%)となりました。

  • (1)活動助成
    異常気象はじめとした自然災害の備えとして、防災・減災に関する応募が多く、次いで心のケア、救命、事故、安全等に関する取り組みの応募が続くこととなりました。 採択件数においても、それらを反映した結果となりました。救命分野では新型コロナウィルスに関する取り組み、安全等では自動車事故の防止に資する取り組み等についても採択いたしました。
  • (2)活動助成(特別枠)
    平成30年7月豪雨の被災者・被災地支援活動、特に岡山県倉敷市における支援活動に引き続き多くの応募がありました。東日本大震災の被災地・被災者支援に関する活動については、発災から10年を迎える年として、一定の応募がありました。被災者の心のケア、コミュニティの復興に関する応募が多く、それらを中心に採択しました。なお、2府4県以外に拠点がある団体として岡山県から8団体、広島県から3団体を採択しました。
  • (3)研究助成
    防災・減災が最も多いものの、心のケア、身体のケア、救命、安全等 バランスよく応募が寄せられました。採択に当たっては本公募助成の趣旨及び社会的必要性等の審査基準に該当するものとし、うち「計画の遂行能力」に関しては、得られる成果の具体性が高いかどうかも含め慎重に審査を行い採択いたしました。新型コロナウィルスに関連付けた研究テーマも目立ちました。

4 総評

今回も熱意あふれる多くの応募をいただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
新型コロナウィルスによりあらゆる社会活動が制約を受け、日常生活すら非常に厳しい中にあって、当初は相当な応募の減少を覚悟いたしまたが、そのような状況に屈せず意欲的に応募いただきました全ての皆様に本当に頭が下がる思いです。本事業は皆様のような志をもっている方によって支えられていることを再認識するとともに、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
さて、全体を通じ、質の高い応募がある一方で、申請上の記載不備等があるために、内容自体はよくても、残念ながら不採択とせざるを得ないケースも少なくありませんでした。不備に至った主な事由を特定して示した通知書を確認いただくとともに、是非次回の提出の際はチェックリストを活用し、採択を目指してください。
活動助成及び活動助成(特別枠)については、コロナ禍で様々な制約が想定される中、実施可能な活動を工夫していただいている計画が多くみられました。新型コロナウィルスは今後も意識せざるをえないと思います。いかに活動の趣旨を達成する計画とするかにつき引き続き工夫をお願いします。
研究助成については、前回に引き続き、テーマのみならず計画及び収支計画も含め、質的な高さを重視し審査いたしました。倫理的配慮については、その必要性について改めての説明を要しないと思いますが、申請書に対応の方針等の記載がなく不採択となった応募が少なくありませんでした。是非漏れのないように記載をお願いします。

「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。その実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、新たに取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。

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「安全で安心できる社会づくり」の一端を担いたいとの思いから、事故や災害に遭われた方々などへの心身のケアに関わる活動や、
地域社会における安全構築に関わる活動に対する支援及び安全に関する啓発活動等を行っています。

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