「2023 公募助成(活動・研究)」審査総評

「2023年度公募助成(活動及び研究)」の審査結果について

公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治

「2023年度公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。

1 応募状況

「2023年度公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケア、並びに事故、災害等の風化防止に関する活動や研究」として募集いたしました。
「活動助成(特別枠)」においては、甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」(以下( )内略)に対する被災者支援活動につき、広島県及び岡山県に活動拠点を置く団体も対象とし、今回を最後の募集として実施いたしました。
募集にあたり、対象となる府県にある社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関、大学等へのチラシ郵送等を行い、各所でチラシ等の掲出や配布、ホームページ等への情報掲出に積極的にご協力をいただきました。新型コロナウィルス感染症影響による各団体の活動における様々な制約に伴い、屋外活動を主体とするものが減少し、また、特別枠として東日本大震災への適用がなくなるとともに、平成30年7月豪雨災害の被災者への直接的な支援のための活動は、発災からの経過年数に伴い徐々に低減してきたようであり、応募総数において、前年に引き続き下回る結果となりました。ただ、研究助成においては、研究活動にも調査活動をはじめコロナ禍故の制約がありながら、2023年度に2年目を迎える件数を勘案すれば、ほぼ前年並みの応募数だったと捉えております。
その結果、応募数は合計91件(前年110件)でした。

2 審査プロセス

審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある当財団による本助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準とし、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等も十分踏まえつつ、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点に加え、コロナ禍における計画の実行可能性も意識し、厳正な審査により採択案を決定しました。2年助成については、複数年に亘る助成としてテーマや計画が相応しいかの視点を踏まえました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性や、今後の発展性、社会に対する影響力のほか、申請時点での具体的な活動成果等を総合的に吟味したうえで、採択案を決定しました。

3 審査結果

活動助成29件、1,386万円(前年24件、1,127万円)、活動助成(特別枠)10件、498万円(前年15件、722万円)、研究助成7件、803万円(前年13件、1,637万円)、加えて研究助成2年目に対する6件、661万円の助成を含め、合計52件、3,348万円(前年52件、3,486万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。
採択率は、活動助成が66%(前年55%)、活動助成(特別枠)が71%(前年60%)、研究助成が21%(前年32%)となり、全体では51%(前年47%)となりました。

  • (1)活動助成
    異常気象はじめとした自然災害の備えとして、防災・減災に関する応募が多く、次いで心のケア、救命、事故、安全等に関する取り組みの応募が続くこととなりました。 採択件数においても、概ねそれらを反映した結果となりました。
  • (2)活動助成(特別枠)
    今回が最後の設定となる平成30年7月豪雨の被災地・被災者支援に関する活動については、発災からの経過年数とともに、支援のニーズも変化してきているようであり、応募件数は減少となりました。被災者の心のケア、コミュニティの復興に関する応募が多く、それらを中心に採択しました。なお、2府4県以外に拠点がある団体として岡山県から1団体、広島県から5団体を採択しました。
  • (3)研究助成
    心のケアを筆頭に、身体のケア、防災・減災、救命、安全等バランスよく応募が寄せられました。採択に当たっては本公募助成の趣旨及び社会的必要性等の審査基準に該当するものとし、現下の状況における国内外の調査研究の実施可能性等も含め慎重に審査を行いました。採択にあたっては、それぞれ助成期間(1年/2年)に照らし、テーマ及び計画が相応しいかの観点も重視しました。

4 総評

今回も熱意あふれる多くの応募をいただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
全体を通じ、残念ながら、申請上の記載不備等により不採択となる件数割合が一定数ありました。提出時のチェックリストや、過年度の不採択事由を示した通知書等の活用を、先ずはお願いしたいと思います。
新型コロナウィルスの5類相当への変更が予定されているものの、安心して活動するという観点からは感染防止を当面は意識せざるをえないと思います。活動助成及び活動助成(特別枠)については、引き続き、オンラインの活用(代替措置として念頭に置くことも含む)をはじめ、感染リスクを低減させながらいかに活動の趣旨を達成する計画とするか、最新の状況を踏まえた工夫をお願いします。
研究助成については、萌芽的研究、応用的研究のいずれであっても、安心・安全に関し、社会実装への期待や他の研究者に参考となるような成果などを申請書から感じられるかという観点を大事にしながら、収支計画の具体性や合理性も含め審査いたしました。2年助成に対しては、様々な調査を伴う研究案件が多く寄せられる中、昨年度も申し上げましたが、調査の期間やそのための準備期間の長さに疑問を感じるものも少なくありませんでした。必要以上に汎用性を持たせたものは、メッセージとして計画内容の曖昧さが審査委員に対して伝わってしまうため、結果として、助成採択が難しくなってまいります。また、研究全体のゴールイメージと今回の助成期間における到達点を示していただけると、研究遂行への決意が伺えることとなり、計画の具体性がより増してまいります。
コロナ禍で研究方法等が制約される中ですが、所期の目的・成果実現に向け、必要な助成期間を選択のうえ、申請書に皆さまの当該研究に対する想いを込めていただきたいと思います。

「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。その実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、新たに取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。

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「安全で安心できる社会づくり」の一端を担いたいとの思いから、事故や災害に遭われた方々などへの心身のケアに関わる活動や、
地域社会における安全構築に関わる活動に対する支援及び安全に関する啓発活動等を行っています。

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