「2024年度公募助成(活動及び研究)」審査総評
「2024年度公募助成(活動及び研究)」の審査結果について
公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
事業審査評価委員会 委員長 白取 健治
「2024年度公募助成(活動及び研究)」に多数の応募をいただき、深くお礼申し上げます。
応募いただいたどの案件も、「安全で安心できる社会」に対する強い思いが伝わってくるものであり、事業審査評価委員会委員一同、一つひとつの申請書を丁寧に拝見させていただき、慎重に議論を重ねながら審査をさせていただきました。
今回、助成対象となった団体や研究者の方々だけでなく、応募いただいた皆様が真摯な取り組みを継続的に行っていくことが、「安全で安心できる社会」の実現につながる道になると、我々は信じています。
1 応募状況
「2024年度公募助成(活動及び研究)」では、募集テーマを「事故、災害や不測の事態に対する備えやその後のケア、並びに事故、災害等の風化防止に関する活動や研究」として募集いたしました。
コロナ禍により応募の減少傾向が続いていたため、今回の募集にあたり、対象となる府県にある社会福祉協議会や市役所、ボランティア情報センター、NPO支援機関、大学等へのチラシ郵送等をより積極的に行い、各所でチラシ等の掲出や配布、ホームページ等への情報掲出に積極的にご協力をいただきました。
新型コロナウィルス感染症が昨年5月に5類に移行したとは言え、しばらく続いた感染症に対する社会的な警戒感は当面継続するとの想定と、特別枠として募集を行ってきた平成30年7月豪雨災害の被災地・被災者支援活動の設定を前回で終えたことから、応募数の多少の減少は避けられないと覚悟しておりました。しかしながら、皆さまの安全・安心に対する強い想いにより、応募数は私どものそのような想定を覆し、対前年で増加するという結果となりました。また、研究助成においては、2年助成を中心に、本格的な研究活動再開の兆しも感じられるような多くの応募がありました。
その結果、応募数は合計93件(前年91件)でした。
2 審査プロセス
審査は、これまでと同様、理事長から諮問を受け、まず事業審査評価委員会を開催し、審査基準や具体的な審査方法等を確認したうえで進めました。
7名の委員全員が全案件の申請書をじっくりと読み込み、1次審査と2次審査において全案件について各自で評価を行いました。その後、最終審議の場としてあらためて事業審査評価委員会を開催し、各委員が2次審査の評価を持ち寄り、集中的な討議の末、採択案を決定するとともに、その結果を理事会に答申しました。
審査にあたっては、応募資格を満たしているかの確認はもちろんのこと、募集要項に記載がある当財団による本助成の趣旨に合致することを最も基本的かつ重要な判断基準とし、特定分野に偏らないよう活動や研究の分野別バランス等も十分踏まえつつ、「社会的な必要性」、「独創・先駆性」、「計画性」、「経費の合理性」、「地域における連携やつながり」の視点を意識し、厳正な審査により採択案を決定しました。さらに、研究助成については、一部見直した申請フォームに沿って、当該研究の直接のアウトプットが何であり、それが社会に対しどういうアウトカムをもたらすのかが明確に描けているかどうかについても重視しました。
なお、これまで当財団から助成を受け、今回も申請があった活動に対する継続助成の審査にあたっては、新規案件と同様の視点で審査を行うのみならず、当財団が継続して助成を行う必要性やニーズ、今後の発展性、社会に対する影響力のほか、申請時点での具体的な活動成果等を総合的に吟味したうえで、採択案を決定しました。
3 審査結果
活動助成33件、1,565万円(前年39件、1,884万円(特別枠含む))、研究助成8件、1,093万円(前年7件、803万円)、加えて研究助成2年目に対する4件、487万円(前年6件、661万円)の助成を含め、合計45件、3,145万円(前年52件、3,348万円)を採択案件として理事会へ答申いたしました。
採択率は、活動助成が67%(前年67%(特別枠含む))、研究助成が18%(前年21%)となり、全体では44%(前年51%)となりました。
- (1)活動助成
コロナ禍において実施が困難であった、対面で集まって行う取り組みが増え、それに伴い自然災害の備えとして防災・減災に関する応募が多くありました。次いで心のケア、救命、安全等に関する取り組みの応募が続くこととなりました。 採択件数においても、概ねそれらを反映した結果となりました。 - (2)研究助成
防災・減災に関する応募が最も多く、心のケア、安全がそれに続き、以下、身体のケア、交通、救命等バランスよく応募が寄せられました。採択に当たっては本公募助成の趣旨及び社会的必要性等の審査基準に該当するものとし、審査を行いました。加えて、それぞれ助成期間(1年/2年)に照らし、テーマ及び計画が相応しいかの観点も重視しました。
4 総評
今回も熱意溢れる多くの応募をいただき「安全で安心できる社会」の実現に向けた素晴らしい活動や研究に対して助成できることを大変光栄に思います。
全体を通じ、申請上の記載不備等により不採択となる件数割合が、前回よりは減少したものの、依然として一定数ありました。提出時のチェックリストの活用とともに、特に再チャレンジされる皆さまには不採択事由を示した通知書等の確認を是非お願いしたいと思います。
活動助成については、応募された多くの方が地域等の安心・安全を高めたいとの想いでボランティアに取り組まれている方であり、応募に対し敬意を表します。その上で一点申し上げると、申請書の実施方法欄にもう少し具体的な活動内容を記載いただきたいということです。団体(の代表者様)の想いは強く感じますが、その反面、活動内容は総論に留まり、私ども審査委員が具体的なイメージをすることが難しい応募が少なくありませんでした。本助成は(団体が取り組む)“活動”に対し助成していますので、その活動の具体的内容がわかるような申請をお願いいたします。
研究助成については、萌芽的研究、応用的研究のいずれであっても、安全・安心に関し、社会実装への期待や他の研究者に参考となるような成果などを申請書から感じられるかという観点を大事にしながら審査いたしました。
当研究助成が一つのテーマに対し、助成期間にかかわらず採択回数の制限を特に設けていないのは、そうした成果への到達を願うからに他なりません。
社会実装等への繋がりも意識し、今回申請フォームを一部見直しました。所期の目的・成果実現に向け、必要な助成期間を選択いただくとともに、研究テーマの最終的なゴールイメージを申請書の目的欄に、今回の助成期間における到達点を申請書の成果欄にそれぞれ記載いただき、想いが込められた研究成果に至るロードマップとして私どもに示していただきたいと思います。
本年1月に発生した令和6年能登半島地震は地域や住民の方々に甚大な被害をもたらしました。一日も早いインフラの復旧が望まれるところでありますが、この地震による被災者の方々に対しては、その後も柔軟かつ長期的な支援が必要であることから、当財団として何かお力になればと、次回の公募助成の募集時にはこの支援活動に対し活動助成(特別枠)を設定する予定です。エリア等詳細な条件は検討中ですが、そちらへの応募もご検討ください。
「安全で安心できる社会」の実現は、一朝一夕で達成できるものではありません。その実現に向けて真摯で地道な取り組みをされている皆様、新たに取り組みを開始される皆様のご活躍を心よりお祈りしております。